タイル外壁の不安要素

外壁をタイル貼りしたい方に必ず知って頂きたいことが、タイルの剥落問題です。

 

タイルは、多少工事費が高くても高級感がありますし、
塗装よりは長持ちするのでお勧めの工事ではありますが、
剥がれて落ちてくるのではないかという心配を持つ方もいるはずです。

 

確かにその通りで、過去に、
ビルの上の方からタイルが剥落して死亡事故にもなった事例がありますから、

 

タイル外壁の不安要素は、やはり剥落事故ということになりますね。

 

なんで剥落が起こるのか、その原因を探っていきましょう。

 

まず1つ目に、 圧着が弱い、という点が上げられます。

 

タイルの貼り付けには、タイルパッチという電動工具や叩き板などの道具を使い、
タイルを圧着していくのですが、これがしっかりされていないと経年後に落下する可能性があります。

 

外壁タイル剥落例

 

上の写真の例は弾性ボンドで施工してあり、この場合は、剥落したとしてもタイルの粒(1枚)だけなので、
万が一つ、人の頭上に落下しても、戸建て住宅の外壁など、低所であれば、
命を落とすような重大な事故にはならないかと思います。

 

注意しなければならないのは、コンクリートに貼付けモルタルでタイルを貼る場合です。

 

2つ目の原因になるものは、
コンクリートの下地処置が適切になされているかどうか、になります。

 

ビル外壁タイル剥落例

 

コンクリートの下地処置がちゃんとなされていたか

 

マンションなど大きな建物は、コンクリートの外壁を生成しておいて、その上に塗装やタイルを貼ることが多いです。
型枠を組んで生コンを流し込み、生コンが固まった何日か後に、型枠をはずすと無垢のコンクリートが現れます。

 

その際、コンクリートと型枠のコンパネを剥がしやすくするために、
あらかじめコンパネ側に剥離剤などの液剤を塗っておくのです。

 

コンパネをはずして、露わになったコンクリートはツルツルの状態です。
しかも、表面には液剤が残留しているのですね。

 

ここからが問題で、どう下地処置をするかによって、後々剥落につながるかどうか決まってくるということです。

この時に、最適な下地処置がしっかりなされていれば、剥落の可能性は極めて低くなる。

 

具体的な下地処置をあげると、表面がツルツル状態のコンクリートであれば、
必ず目粗し(表面を削ること)して、ざらざらにしなければなりません。

 

電動工具を使ってコンクリートの表面にキズをつけ、しっかり高圧水洗浄を行う、あるいは、広い面積の場合、
超高圧洗浄機で表面処理を行えば、表面にキズをつけることと水洗いも同時にできて、一石二鳥です。

 

なぜ目粗し、キズをつけることが重要か。それは、食いつき(密着)をよくするため。

 

また、近年ではタイル貼りを前提とした型枠材がありまして、
これは、コンパネの表面が凹凸に加工されてあって、 型枠をはずすと、
コンクリートの表面がざらざらになるというものですから、これなら大丈夫ですね。
水洗浄はもちろん行いますが、目粗しは不要です。

 

表面がざらざらの状態で水洗いをしてきれいになった後は、プライマーを塗布し、
カチオンと呼ばれるモルタルを金ゴテで薄塗りすれば、
かなり接着力が増すので剥落する可能性は極めて低くなります。

 

後は、貼付けモルタルでタイルを丁寧に圧着すれば、後々に、甚大な被害が発生するような心配はありません。

 

手順をまとめると、

  1. 表面がツルツルのコンクリートは目粗しを行う。
  2. 高圧水洗浄できれいにする。
  3. プライマーを塗布
  4. カチオンモルタルをこすり塗る
  5. プライマーを塗布
  6. 貼付けモルタルを塗り付け、タイルをしっかり圧着
  7. 目地材をつめる

こうした一連の作業が最適な工事になるかと思います。
剥落事故防止を考えれば、どれ一つ手抜きはできません。

 

特に、1〜5の下地処置の部分は重要です。

 

工期の短縮や人工を押さえるなど、効率をよくするための工夫は、
1と2で超高圧洗浄機を使えば同時に出来ますし、
凹凸加工されたコンパネを使えば、1はしなくて良いですね。

 

しかし、これらの重要な作業を手抜きすれば、経年後に剥落する可能性は高いです。

 

コンクリート〜モルタル施工の剥落は、弾性ボンドでの施工とは訳がちがい、
落ちてくるのはタイル1枚1枚の粒ではありません。

 

ヘタすると、コンクリートから剥離した、貼付けモルタルとタイルと目地材がひと塊になって落ちてくるのです。

 

こんな、石のように硬くて重い物が頭上から降ってきたら、生身の人間はたまったもんじゃありません。

 

これは、界面剥離と言われる現象で、界面にはタイルと貼付けモルタルとの界面、貼付けモルタルとプライマーの界面、カチオンモルタルとプライマーとの界面と、それぞれあるのですが、もっとも注意すべきはコンクリートとの界面です。

 

コンクリートの界面剥離が発生した場合、1から4までの工程が不十分であったと言わざるを得ないのですが、
やはり、1番のコンクリート表面の目粗しが最重要です。

 

ツルツルのままのコンクリートとプライマーとの界面から剥離しようものなら、
その上の部分である貼付けモルタルとタイル、目地材がまるごと剥落します。

 

これは絶対に避けなければなりません。
下地処置を重視して、剥落の可能性を最小限にとどめることが何よりも最優先なのです。

 

剥離が発生するプロセス(順序)を想像すると、
外壁や屋根の一部にわずか数ミリ〜数センチの穴が開いてそこから雨が侵入し、
壁の一部に留まった雨水が原因で、経年後に壁が浮いた状態になり、

 

更に進行し、壁にたまった水は日照によって膨張と収縮を繰り返し、
特に日照時と日没後の温度差が大きい冬場は浮きが進行するなど、
最初はほんのわずかな隙間でも、だんだん隙間が広がってくるというわけですね。

 

しかし、ちゃんと手順を踏んでしっかり施工すれば、
少しぐらいの穴があったとしても、界面剥離までには発展しないのです。

 

一昔前は、外壁にタイルを貼る接着材といえば、セメントと砂を混ぜた、モルタルしかありませんでした。

 

しかし現在では、接着力が抜群の弾性ボンドという貼付け材ができています。
この弾性ボンドを使って、手抜きすることなく丁寧にタイルを貼れば、
剥落する可能性は、ほぼゼロパーセントです。

 

大きいマンションでさえも、タイル貼りに弾性ボンドが採用されるケースもありますから、
戸建て住宅の外壁リフォームをタイル貼りにするのであれば、絶対弾性ボンドにすべきです。

 

ボンド貼り用に作られた軽量タイルも豊富にあるので、
剥落する可能性が低いだけでなく、建物にかかる負担も軽減できます。

 

モルタルで施工するよりも工事費は若干高めですが、後々のことを考えれば、弾性ボンド施工の方が得策ですね。

 

 

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